2000/04/14 (金) 23:57:26      [mirai]
【4月12日】 たぶん「少年アリス」以来の購入になるんじゃないかな、長野まゆみさんの最新刊「サマー・キャンプ」(文藝春秋、1048円)を買って読
む。「体外受精で生まれた温(ハル)は、出生の秘密を自らの手で明かそうと決意するのだが……。近未来を舞台に、人間が、種として背負うべき未
来への責任を問う傑作」と帯にあるんだもん、これは読まない訳にはいかないじゃないですか、SF&ファンタジーな人間としては。で、印象はというと
これがなかなに難しい。決して多くない登場人物なんだけど、「体外受精」の実は錯綜した経過がキャラクターの関係を入り乱れさせて一読での理解
を妨げ、かつ記憶にまつわる問題が視点の変化を招いて何が事実で何が空想なのかを分からなくさせる。そんなもつれた糸をほぐすためにはもう1
度、あるいは2度3度と今度は系図なんかを引きながら読んでいかなくっちゃと思う。決して厚くないのに脳味噌をぐらぐらさせる本、ですね。

 何か女性に近づくと蕁麻疹が出る温(ハル)にある日男の子が近寄って来てパートナーにしてくれとか言うあたりがスタートで、ふーん一種のボーイ
ズ・ラブ? とか思っていたら話がどんどんとそれていく、男の子が女言葉を喋っていたり温が若い美貌の獣医に迫られたり女アレルギーの秘密が分
かったり染色体に絡む重大な秘密が温に限らずたくさん明らかになったり。そうこうしている中から立ち上がって来るのは見かけのジェンダー心のジ
ェンダーなんか超えた場所にある「愛」ってことになるんだろーけど、やっぱりよく分からない。意味深なタイトルも含めて週末にでもじっくりと考えよー。
風力発電だかに使う風車が砂漠に立ち並んでいる表紙の写真がちょっと好き、常盤響さん以来の最近気になった装丁かも、担当した大久保明子さ
んって他に何かをしている人なのかな、探してみよー。