2000/04/21 (金) 01:35:36      [mirai]
[V5] マンガ『ドカベン』での「ルールブック盲点の1点」について

          10回表、先頭の岩鬼が死球で出塁、殿馬の秘打「ハイジャック」で無死一二
          塁、 山岡バント失敗。山田内野安打で一死満塁。 微笑スクイズを試みるも小
          フライ。不知火、これをダイレクトキャッチ。 一塁に送球して山田アウト。
          これで3アウトのはずなのに、投球と同時に スタートを切った岩鬼の得点が
          認められてしまいました。 

          マンガ中では規則7.10が引用されてましたが、7.08か4.09も一緒に 引用し
          た方が分かりやすかったことでしょう。 

          7.10は走者がアピールによってアウトとなる場合が書かれていて、その (a)
          項に「飛球が捕らえられた後、走者が再度の触塁を果たす前に、身体 あるい
          はその塁に触球された場合」とあります。しかし、7.10は同時に アピール権
          の消滅時効として、「イニングまたは試合終了時のアピール は、守備側チー
          ムの選手がベンチに引き上げるまでに行わなければなら ない」とも定めてい
          ます。 

          7.08(d)はさらに、「アピール権消滅後は帰塁をしていないという理由に よ
          って走者がアウトにされることはない」としています。従って、確かに 岩鬼
          はフライングスタートして、「飛球が捕らえられた後、再度の触塁を 果た」
          したわけではありませんが、しかし、アウトにされたわけでもない のです。
          不正な手段による進塁も、アピール権が消滅した瞬間正規のもの となりま
          す。 

          また、4.09は、「3アウト以前に走者が正規に一、二、三、本塁と進み、 か
          つ、これに触れた場合には、その都度1点が記録される」とし、例外と し
          て、第3アウトが次に該当する場合を挙げています: (1)打者走者が一塁に達す
          る前のアウト (2)フォースアウト (3)前位の走者が正しく触塁せずにアウトに
          された場合の後位の走者 

          このケースにおける第3アウトは上の(1)~(3)のいずれでもなく、岩鬼の本
          塁生還は第3アウト成立前ですから、その得点が認められたのです。 

          もし、一死満塁ではなく無死満塁だったとして考えると分かりやすいかも 知
          れません。この場合、守備側は当然三塁走者もアピールアウトするに決 まっ
          てますが、これを怠ったとしましょう。すると、投手が打者へ1球投じ る
          か、二塁へ牽制球を投げたとき、アピール権が消滅し、岩鬼の本塁生還 は認
          められます。 

          ところで、第3アウトの取り方を誤った場合でも、7.10は守備側に救済措 置
          を定めています。すなわち、第3アウトが成立した後でも、守備側はこ のア
          ウトよりも他に有利なアピールプレイがあれば、それを選んで、先の 第3ア
          ウトと置き換えることができます。もちろん、アピール権消滅以前 であるこ
          とが必要です。 

          なお、4.09(a)【注1】には、「第3アウトがフォースアウト以外のアウト 
          で、そのプレイ中に他の走者が本塁に達した場合、球審は、その走者に アピ
          ールプレイが残っているか否かを問わず、本塁到達の方が第3アウト より早
          かったか否かを明示しなければならない」と定めています。これ は上記の試
          合執筆当時には定められていなかったルールで、マンガを読 み直しても、球
          審のそういった仕草は出てきませんので念のため。当時 のルールブックをお
          持ちの方は確認してみましょう。