そうこうしている内に、ヤツは自転車の荷台にブツを積み終えて、また こちらに引き返して来るところだった。 俺の心は内心、長年憧れていた芸能人に偶然めぐりあって声を掛けるとき のそれだった。 「村崎百郎って知ってます?」出たセリフはこれだった。 青白い顔に銀縁メガネを掛けたそいつは、こちらに目を合わせず一言 「知らん!」 玉砕だった。取り付くシマがないとはこのことだろう。 俺はフラれたときのような心持ちになり、どうにも居たたまれずその場を 立ち去るしかなかった。 おわり