いったいどんな樹の花でも、いわゆる真っ盛りという状態に達すると、 あたりの空気のなかへ一種神秘な雰囲気を撒き散らすものだ。それは、 よく廻ったこまが完全な静止に澄むように、また、音楽の上手な 演奏がきまってなにかの幻覚を伴うように、灼熱した生殖の幻覚させる 後光のようなものだ。それは人の心をうたずにはおかない、不思議な、 生き生きとした、美しさだ。