投稿者:俺も 2000/06/20 (火) 02:57:01      [mirai]
その2



 夢

 夢を見ていた

 白い雪に覆われる冬の…

 街中に桜の舞う春の…

 静かな夏の…

 目の覚めるような紅葉に囲まれた秋の…

 どの夢にも楽しそうに笑う栞がいた
 そんな私を見て微笑む俺がいた

 夢は俺の「夢」だった

 元気な栞がいて
 そばに俺がいれればそれで良かった

 …気がつくとあたりは夕日に照らされ赤く染まっていた
 噴水の水さえもまるでルビーのように輝いている

 噴水の向こうには栞がいた
 俺は走り出した、栞めがけて
 しかしいっこうにその距離は縮まらない
 それどころかどんどん離れていってしまう
 (栞、待ってくれ。)
 そう叫ぶが声にならない
 (お前を独りにさせない…ずっと俺がそばにいるから!)
 それも虚空に吸い込まれてしまう
 (頼む、栞、待ってくれ!!)

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 「待ってくれ!!」
 目が覚めていた
 …ここは何処だろう…何故かみんなの視線を感じる
 ええと、前には黒板があって、隣には名雪が寝ていて、
 俺は机に座っていると…となると、授業中なわけで

 「ほほう…相沢、何か質問でもあるのか?」
 ちょっと…イヤ、かなりにらみを利かせた先生がこっちを見ている
 「イヤ、別に何もないです…すいません。」
 「そうか、寝るのはかまわんが、寝言はやめてくれよ。」
 どっと、クラスに笑いが起こる
 生徒に理解があるのはいいんだが、一言多いんだよなぁ
 そんなことを思いつつ、
 「はぁ、以後気をつけます。」
 と言っておく。

 席に着くときに、ちらっと斜め後ろを見る…香里の席だ
 香里はあの日、栞と別れた日から、学校を休んでいる。
 栞のことを聞きたかったのだが、名雪の
 「香里なら大丈夫だよ。」
 と、ちょっとずれた言葉で何故か納得してしまう自分がいた。
 そうはいっても心配なわけで、ついつい中庭に目がいってしまう。
 あの雪の降る中でたたずむ少女を思い浮かべながら、
 雪の中でアイスをおいしそうに食べる少女を思い浮かべながら、
 あの笑顔の中に悲哀を含む少女を思い浮かべながら、
 カレーが食べれなくて泣きそうになってる少女を思い浮かべながら、
 大きな弁当箱を引きずるように持ってくる少女を思い浮かべながら、
 もぐら叩きができなくて、えぅ~とか言ってる少女を思い浮かべながら、
 「そんなこと言う人嫌いです。」と言う少女を思い浮かべながら、
 あの胸のペッタンコな少女を思い浮かべながら、
     ・
     ・
     ・
 さすがに本気で、
 「そんなこと言う人嫌いです!!」
 と言われそうなのでここでやめておく。

 そんな少女の面影を中庭に探してしまう自分が悲しかった
 後悔しないと栞に誓ったはずなのに…

 そんなことを考えているうちに放課後になっていたらしい
 「裕一、放課後だよ~」
 「…そうだな…」
 「私、今日、部活ないから一緒に帰ろうよ。」
 「…ああ。」
 「…裕一どうしたの?何か変だよ?」
 「そんなことないぞ、俺はいつも元気バリバリだぞ。」
 「やっぱり変だよ~、もしかしてさっきの寝言?」
 何でこんな時だけ、鋭いんだこいつはとか思いながら素直に答えてしまう。
 「まあそんなことろだ。」

 歩きながら、さっきの夢のことをかいつまんではなしてやる
 「