2000/06/20 (火) 03:13:59      [mirai]
その3



 夕食をとったあと、俺は独り部屋で考えていた
 栞を救う可能性のある方法を…
 それが成功したとしても、栞の望む結果にならないことを…
 それが俺にできる最大限のことだと知っていながら、
 これまでやらなかったのは、二人で幸せになりたかったからだと言うことを…

 やはり、栞には助かったもらいたい。
 それが俺の出した結論だった。

 思い立った俺は、2通の手紙を書いた。
 一つは、水瀬家のみんな、秋子さんや名雪に宛てたもの、
 もう一つは、栞に宛てたものだ。
 内容は、これから俺がしようとしていること、
 そして俺の気持ち、これからのこと…
 読み返してみるとまるで、遺言のようで苦笑してしまった。

 そして、みんなが寝静まった頃、俺は病院に向かった。

 病院に着いた当初は、来たはいいがどうやって入ればいいか悩んだ
 普通に入れてもらえるはずはないので、いろいろを見て回った結果
 運良く、通用口が開いていた

 そこから、栞の病室へと向かう…

 ************************************

 夢を見ていた、裕一さんと遊んでいる夢だ
 何をしてるのかは分からなかったけど、幸せな気持ちでいっぱいだった。

 不意に景色が変わる、あのいつもの噴水のある公園へと…

 その瞬間、裕一さんに抱きしめられる
 「ちょっと痛いですぅ~」
 「ああ、すまん。あんまり栞が可愛かったせいでつい。」
 「…でも、嫌ではないです…」
 「じゃあ、もう少しこのままでいてくれ。」
 「はい…」
 何故かとても心が安らいだ、ああ、ここが私の居場所なんだと錯覚してしまうほどに…
 そう思うと、涙が流れてきた、
 これは夢なんだ…
 もう裕一さんに抱きしめてもらえないんだ…
 自分でも分かっているはずなのに…

 「栞、泣いてるのか?」
 「えぐっ…すいません、うれして、…もうどうしようないくらい、うれしくて…」
 「そうか。」
 「はい…」