2000/06/20 (火) 03:14:47      [mirai]
「なあ、栞、今までどうだった?」
 どうだった…なんて曖昧な言葉なんだろう、だけど裕一さんの言いたことは伝わってきた
 「幸せでした。裕一さんと出会ってほんの数週間しか経っていませんけど、
  裕一さんにはたくさんの幸せをもらいました。
  恋をすることもできましたし、お姉ちゃんとも仲直りできました。
  あっ、新しい友達もできたんですよ。入学式に話しかけてくれた娘なんですけど、
  今度、一緒に遊びに行こうって約束もしたんです。」
 「そうか、よかったな。」
 「はい、私とっても幸せで、幸せで……ぅぅ」
 「……」
 「でも、私もっといろんなことしたいです!裕一さんといろいろなところに行きたいです!
  春には花見に行きたいし、夏にはプールにも行きたいです。
  秋にはおいしいもの食べたり、ハイキングにも行きたいです。
  冬には、アイスを食べて、おっきな雪だるま作りたいんです。
  もっともっといろんなことしたいんです!
  私もっと生きたいです!!」
 「そうだよな…」
 「すいません、私わがままですよね…」
 「なあ、栞…お前はもっとわがままでいいんだよ、悲しみを独りで背負うことはないさ、
  俺も、香里も、名雪も、みんなお前の力になってくれる、お前は独りじゃないだから。
  もっとわがままになって、俺を振り回すくらいになってくれよ
  そして何処でも行こうぜ、いろんなことしようぜ。」
 「そうですね、でも、どうしようもないこともありますよ…」
 「なあ、栞…お前もっと生きたいか?」
 「はい、でも…」
 「でも、は無しだ。」
 「…卑怯です、裕一さん…」
 「じゃあ、俺の命いるか?」
 「裕一さんの命ですか?それはいりません。私、裕一さんと一緒に生きたいんです。
  だから、それはいりません。」
 「…そうか、でも俺は栞に生きていてもらいたいんだ…どんなことをしても…」
 「裕一さん…自己犠牲なんて、自己欺瞞にすぎないんだって知ってます?」
 「ああ、それでもかまわない。」
 そう言って、裕一さんは私の頬にそっと手を当てた
 「裕一さんの手、暖かいです。」
 私がそっと目を閉じると、裕一さんの息づかいが近づいてきた

 重なり合う唇…
 その瞬間、私の体は温もりに包まれ