2000/07/08 (土) 07:43:23      [mirai]
駅の構内を歩いていた。昼飯を摂っていなかったので、なにかを食
べようと思っていると、プラットホームのベンチ2つ分もあるかと
思われるデブが蒸しパンのようなものを頬張っている姿が眼に入っ
た。デブの顔は横に広がり異様な生き物が共食いをしているみたい
だったので、胸が悪くなって食欲も失せてしまった。

構内から階段を昇るとすぐに、駅ビルに入ってしまった。駅ビルと
いっても商店街のようなひろいところではなく、事務所の並んだ雑
居ビルで、狭い廊下を地下の駐車場から流れてくるのか自動車の排
気ガスの臭いと、便所の消臭剤の入り混じった空気が充満している。

上階へあがるエレベータを探していると、あろうことか、「火事だ」
という叫び声がして、どこにいたのか5,6人が走って逃げてくる。
見ると、なるほど、何処かで失火したらしく、煙が廊下の天井を伝っ
ている様子が眺められる。

それでも、のんびりと、何処かに退避するかなどど考えて、逃げて
行った人の後を歩いて追った。
しかし、現状は考えていたよりも深刻らしく、突然に、近くの扉が
はじけ飛んで、部屋のなかから火炎が噴出して、廊下の天井を焦が
し始めた。
驚いて、非常階段を降りて行くと、さっき逃げて行った人達よりも
もっと大勢の人達が階下に下りようと集まってきていた。
しかし、渋滞している道路のように全く先に進まない。
見ると、さっきのデブが非常階段の出口に挟まって動けなくなって
いるため、だれも外に出られないでいる。
非常階段の上からは、累々と避難の人達が降りてくる。もう上から
だけでなく、近くの扉からも煙が漏れてきている。非常階段の出口
付近は、空気が薄くなっているらしく、しゃがみこんでいる人もい
る。しかし、非常口に挟まったデブはじたばたするばかりで、押し
ても、引いても動かない。
煙が濃くなってきて、温度もどんどん上がってきた。めまいがして
きて、力がなくなってきたが、とにかくデブをその辺にいた数人で
押しつづけた。しかし、限界だった。

デブはわれわれ閉じ込められたもの達に背を向ける形で、非常口に
挟まって、助けをさけんで、もがいている。
「だれかわたしをたすけて~、
 死にたくないのよ~、
 わたし焼け死んじゃう~、
 だれかわたしをたすけて~、」

デブの叫び声を聞きながら、意識が朦朧となっていくのがわかった。