中山からすこしはなれた山の中に、「ごん狐」と言う狐がいました。 ごんは一人ぼっちの子ぎつねで、しだのいっぱいしげった森の中に住んでいました。 そして、夜でも昼でも、あたりの村へ出て来ていたずらばかりしていました。 ごんは、兵十がいなくなると、びくの中の魚を川にぽんぽん投げこみました。 最後に頭をびくの中につっこんで、うなぎを口にくわえました。 そのとき向こうから、兵十が「うわぁ、ぬすっと狐め。」とどなりたてました。 「あぁ、葬式だ。」ごんは、六地蔵さんのかげにかくれていました。 墓地には、彼岸花が赤い布のように咲きつづいていました。 「死んだのは兵十のおっかあだ。」「兵十のおっかあは、うなぎが食べたいと言ったに違いない。」