兵十は、おっかあが死んでしまってはもう一人ぼっちでした。 「おれと同じ一人ぼっちの兵十か」ごんはうなぎのつぐないに、山で栗をひろってこっそり入口におきました。 次の日も、その次の日も、栗や松たけを持って行きました。 月のいい晩でした。 ごんは、ぶらぶら遊びに出かけると、道の向こうから話し声が聞こえます。「なぁ、加助。このごろとてもふしぎなことがあるんだ。」「おっかあが死んでから、だれかがおれに栗や松たけをくれるんだよ。」 あくる日もごんは、栗をもって行きました。 兵十は、ごん狐に気づくと、火縄銃をとってうちました。 「おや、ごんお前だったのか、いつも栗をくれたのは。」 ごんはぐったりと目をつぶったままうなずきました。