2000/07/15 (土) 21:22:45      [mirai]
 蝿が絨毯の上に留まっていたのだ。何をするでもなく-恐らくは前足を擦り合わせていたのだろうが-ただボーッと、もしかしたら蝿なりに考え事でもしていたのかもしれない。
 多くの「人」はその蝿を意味もなく無意識のうちに嫌うだろう。
私はいつから蝿を嫌うようになったのだろうか。思えば小学生の頃は平気で素手で
蝿を捕獲していたものだ。まるで彼の剣豪が箸で蝿を掴むように。
あの頃は蝿を生け捕りにするということはある種のステイタスだったのかもしれない。
 だが今の私は蝿を嫌う。黒く小さな塊が飛び回る様が目障りであるのかもしれないし
その羽の擦り合う音が耳障りなのかもしれない。もっと他の理由があるのかもしれないが。
 私はすかさずすぐ側に上手い具合に脱ぎ放してあったガブリエルチェルシーの
黒のハーフパンツを蝿の上に降らせた。
するとどうか、あのすばしっこい蝿の動きを凌駕しそのハーフパンツは見事それに覆い被さった。その忌まわしい蝿は黒い、ポリエステル64%レーヨン34%残りポリウレタンの生地の下敷きに相成りやがったのだ。
私は歓喜した。それこそ小学生の頃を思い出し彼の剣豪に一歩でもいや、数歩ばかり
近づけたような気がした。
 だがここで鳥肌が立つような思考が脳髄を駆け巡った。
その今はハーフパンツの下敷きになって動けない蝿の処理方法だ。
例えばこのまま蝿の息の根が止まるまで放置しよう。
蝿だって生きていれば新陳代謝もあり排泄行為も行うだろう。
そうすると私のお気に入りの-色々な思い出もこもっている-ガブリエルチェルシーの
ハーフパンツはこ汚い蝿の汚物にまみれてしまうのではなかろうか。それは困る。おおいに。
かといって覆い被さっているパンツをどけその束縛から解放され嬉々とした表情で
壁や屋根に囲われてはいるが再び大空へと飛び出す蝿をその瞬間を見計らって撃墜する
などという芸当をやってのける自信はない。私は所詮剣豪にはなれないのだ。
 ここで聡明な君達の知恵を拝借したい。
私はどうするべきなのだろうか?
今すぐ、お気に入りのパンツが蝿の汚物にまみれずに更に糞忌々しい蝿の野郎を
冥腑にぶち込んでやるにはどうすれば良いのだろうか?