「大丈夫か、真琴」「あぅーっ･･･」
「何か…して欲しいことあるか」「あぅーっ･･･」
「ご本は？」「あぅーっ･･･」
「よぅし、ご本、読んでやろうな」「あぅーっ･･･」
「真琴？」「あぅーっ･･･」
「おまえが一番好きだった本だぞ」「あぅーっ･･･」
「よし、読むからな。はじまりはじまり」「あぅーっ･･･」
「『恋はいつだって唐突だ』」「あぅーっ･･･」
「…『わかった。絶対に迎えに来るから』」「あぅーっ･･･」
「『そのときはふたりで一緒になろう。結婚しよう』」「あぅーっ･･･」
「結婚しようか、真琴」「あぅーっ･･･」
「な、真琴」「あぅーっ･･･」
「じゃあ出かけよう」「あぅーっ･･･」
「ずっと、いっしょにいられるようにな」「あぅーっ･･･」
「大丈夫。手、繋いでいてやるから」「あぅーっ･･･」
「おまえは、よくここから落ちたからなぁ」「あぅーっ･･･」
「ほら、足元を見て、気を付けて歩けよ」「あぅーっ･･･」
「おっと、そうだったな。悪い悪い」「あぅーっ･･･」
「好きなだけ食え」「あぅーっ･･･」
「おい、真琴。起きてるか？」「あぅーっ･･･」
「俺たちの結婚式だ」「あぅーっ･･･」
「ずっと、いっしょにいような」「あぅーっ･･･」
「あーあ…ほら、泣くな、真琴」「あぅーっ･･･」
「ベールなんて、どうでもいいから…」「あぅーっ･･･」
「今日は記念の日なんだからな。めでたい日なんだぞ」「あぅーっ･･･」
「今日から俺たちは、本当の家族なんだからな」「あぅーっ･･･」
「仕方のない奴だな、おまえは…」「あぅーっ･･･」
「ほら、こい。頭、撫でてやるから」「あぅーっ･･･」
「ほら、これで遊ぼうぜ、真琴」「あぅーっ･･･」
「ちりんちりーん、ってな」「あぅーっ･･･」
「ほら、真琴も、ちりんちりんしてみな」「あぅーっ･･･」
「おまえ、そうやって遊ぶのが好きだったろ」「あぅーっ･･･」
「おーい、真琴ぉ…」「あぅーっ･･･」
「寝るなよ、真琴…」「あぅーっ･･･」
「ほら、鈴で遊ぼうぜ」「あぅーっ･･･」
「楽しいぞ、真琴」「あぅーっ･･･」
「そうそう。今度は俺の番だな」「あぅーっ･･･」
「ずっとこうして遊んでような」「あぅーっ･･･」
「次、真琴の番だぞ」「あぅーっ･･･」
「真琴…？」「あぅーっ･･･」
「ほら、おまえの番だって。聞いてるのか？」「あぅーっ･･･」
「ちりんちりん、って弾くんだよ」「あぅーっ･･･」
「どうしたんだよ、真琴…」「あぅーっ･･･」
「真琴……」「あぅーっ･･･」

「真琴ぉ…」
とすっ、とその腕が俺の手から地面に落ちて…
ちりん…
最後の音をたてた。