2000/08/14 (月) 03:13:51      [mirai]
 墜落の直後に、「はあはあ」という荒い息遣いが聞こえました。ひとりではなく、何人もの息遣いです。そこらじゅうから聞こえてきました。まわりの全体か
 らです。「おかあさーん」と呼ぶ男の子の声もしました。

  どこからか、若い女の人の声で、「早くきて」と言っているのがはっきり聞こえました。あたりには荒い息遣いで「はあはあ」といっているのが分かりまし
 た。まだ何人もの息遣いです。

  突然、男の子の声がしました。「ようし、ぼくはがんばるぞ」と、男の子は言いました。学校へあがったかどうかの男の子の声で、それははっきり聞こえま
 した。しかし、さっき「おかあさーん」と言った男の子と同じ少年なのかどうか、判断はつきません。

  やがて真っ暗ななかに、ヘリコプターの音が聞こえました。あかりは見えないのですが、音ははっきり聞こえていました。それもすぐ近くです。これで、助
 かる、と私は夢中で右手を伸ばし、振りました。けれど、ヘリコプターはだんだん遠くへ行ってしまうんです。このときもまだ、何人もの荒い息遣いが聞こえ
 ていたのです。しかし、男の子や若い女の人の声は、もう聞こえてはいませんでした。

  気がつくと、あたりは明るかった。物音は何も聞こえません。まったく静かになっていました。生きているのは私だけかな、と思いました。でも、声を出して
 みたんです。「がんばりましょう」という言葉が自然に出てきました。返事はありません。「はあはあ」という荒い息遣いも、もう聞こえませんでした。

  風をすごく感じたのです。木のくずやワラのようなものが、バーッと飛んできて、顔にあたるのを感じました。はっと気がついたら、ヘリコプターの音がすぐ
 そばで聞こえる。何も見えません。でも、あかるい光が目の前にあふれていました。朝の光ではなくて、もっとあかるい光です。すぐ近くで「手を振ってくれ」
 だったか「手をあげてくれ」という声が聞こえたのです。だれかを救出している声なのか、呼びかけている声なのか、わかりません。私は右手を伸ばして、
 振りました。「もういい、もういい」「すぐ行くから」と言われました。