2000/08/16 (水) 02:08:30      [mirai]
けっしてキュウリは食べません 
 トマト、ナスは植えても、キュウリは絶対作りません―。三田市内に、昔から決
してキュウリの作付けを行わない地域がある。氏神様の神紋が、キュウリの断面模
様とそっくりで、恐れ多いというのが理由。住民は「輪切りにしたキュウリを食べ
るなんて…」と口をそろえ、どうしても食べたい時には、包丁を斜めに入れる。ち
なみに隣接地域では健康を願ってキュウリを食べる夏祭りが連綿と続いており、住
民らは「そんな祭り知らなかった」と、あ然。(紺野 大樹)

 “キュウリご法度の地”は同市南部の桑原。同地区にある感神社の神紋は、木瓜
(もっこう)紋といい、キュウリを輪切りにした断面に見える。このため、紋の名
称に木瓜(きうり)をあてたとの説もある。

 いつのころからか、たたりを恐れ、キュウリの作付けを禁止。おまけに“神様を
食べる”ことを忌み嫌い、輪切りにしたキュウリは口にしない。戦後になっても
「キュウリを植えれば、身内に不幸がある」「○○さんがけがをしたのは、輪切り
のキュウリを食べたから」などのうわさが。現在約四十戸の農家があるが、どこも
キュウリは作っていないという。

 同神社の祭神は素戔鳴尊(スサノオノミコト)で、やはり神紋に木瓜紋が使われ
ている八坂神社(京都市東山区)の系列。八坂神社社務所によると、七月一日から
一カ月にわたる祇園祭の期間中、同神社の氏子たちも輪切りのキュウリを避け、斜
めに切るか、真ん中をくりぬいたものしか食べない習慣があり、今も守っている人
が多いという。

 桑原で育った農業向井三雄さん(71)は、五十年ほど前に“禁”を破り、一度
だけキュウリを植えたという。「好奇心で植えたけど、よく実ったんや。でも、後
にも先にもそれ一度だけ。うわさになって、やめてもうた」と笑う。今もナスやト
マトは植えるが、キュウリは植えていない。

 同地区に嫁いできた松山ますゑさん(76)は「当初はキュウリは食べられない
と思っていたけど、斜めに切れば大丈夫と聞いて、ホッとしたのを覚えている。や
っぱり、食べたいからねえ」。が、もちろん畑にキュウリの姿はない。

 同地区に隣接する下田中地区では毎年七月末に「キュウリ祭り」と呼ばれる夏祭
りが行われ、夏の間の健康を祈ってキュウリを食べる。キュウリをめぐり対照的な
二地区。特に昔、因縁があったというわけではないそうだ。