投稿者:おふう 2000/08/27 (日) 23:34:08 ▼ ◇ [mirai]【栞】「あっ」
駅前のベンチに座っていたストールを羽織った女の子が、俺の姿を見つけて元気よく手を振る。
【栞】「こんにちは、祐一さん」
【祐一】「こんにちは」
ベンチの方に歩いていくと、栞も駆け寄ってくる。
【栞】「いいお天気になって良かったですね」
眩しそうに青い天井を仰ぐ。
【栞】「きっと、私の日頃の行いのせいですよね」
【祐一】「だからこんなに寒いのか」
【栞】「わー、祐一さんがひどいこと言ってますー」
白い肌の少女が、頬を膨らませて非難の声を上げる。
【祐一】「それにしても、何時から待ってたんだ? まだ約束の時間までは30分以上あるだろ?」
【栞】「ええっと…」
【栞】「確か、ここに来たのは10時くらいだったと思います」
【祐一】「それは、早すぎ」
【栞】「あはは…やっぱりちょっとだけ早かったですよね」
【祐一】「ちょっとじゃないぞ」
【栞】「でも、私は待つことは嫌いではないです」
【祐一】「変なやつだな」
【栞】「わー、一言で片づけないでくださいー」
【祐一】「普通、待つのが好きなやつなんかいないぞ」
【栞】「そうですね…」
【栞】「でも…待つことさえできなかった人だっているんですよ」
【祐一】「どういう意味だ?」
【栞】「意味なんてないですよ」
【栞】「何となく格好良かったので言ってみただけです」
【祐一】「……」
【栞】「そろそろ行きましょうか?」
【祐一】「…そうだな、ここで向かい合ってても仕方ないしな」
【栞】「寒いですし、ね」
【祐一】「それで、どこに行く?」
【栞】「確か、約束しましたよね? 次はわたしが知ってる場所に案内しますって」
【祐一】「そう言えばそうだったな」
【栞】「というわけなので、私が案内します」
ストールの裾を合わせて、ゆっくりと歩き出す。
【祐一】「ここから歩いて行けるところなのか?」
【栞】「そうですね、4~5分くらいはかかりますけど」
振り返って答える。
【栞】「私たち、いつも同じ場所で会っていましたから、たまには散歩もいいです」
【祐一】「確かにそうだな」
俺も栞の後ろに続いて歩く。