投稿者:おふう 2000/08/27 (日) 23:35:19 ▼ ◇ [mirai]【祐一】「カーリングとか」
【栞】「ふたりでは無理です」
【祐一】「ノルディック複合とか」
【栞】「私、スキー滑れないです」
【祐一】「…そうなのか?」
【栞】「…もしかして、雪の降る街に住んでる人は全員がスキーを滑れると思っていませんか?」
【祐一】「思ってた」
【栞】「それは偏見ですよー」
【祐一】「そうかなぁ」
【栞】「外国の人が、日本は島国だから日本人は全員泳ぎがうまいに違いない、って考えるのと一緒ですよ」
無意味に大げさなたとえだったが、言っていることは分かった。
【栞】「それで、結局何をするんですか?」
【祐一】「……」
【栞】「祐一さん?」
【祐一】「…雪合戦でいいか」
別にそれも悪くないような気がした。
【栞】「嬉しいですー」
早速、雪をかき集め始める。
【祐一】「やる以上は本気でいくからな」
【栞】「わっ、ダメですよ。少しは手を抜いてください」
栞と並んで雪をかき集めながら、たまには雪合戦も悪くないと思い始めていた。
結局、たっぷりと時間をかけて栞との雪合戦を楽しむことになった。
終わったときは、ふたりとも雪まみれになっていた。
【栞】「…さすがにちょっと疲れましたね」
噴水の縁にもたれかかるように座って、ストールを羽織り直す。
【祐一】「しかし、平日の真っ昼間に誰もいない公園で倒れるまで雪合戦してる俺たちって、いったい何なんだろうな…」
【栞】「そんなの決まってます…」
栞が俺の方を向きながら、当然というように答える。
【栞】「デートですよ」
【祐一】「なるほど…そうかもしれないな…」
同じように噴水に座って、栞の方を向く。
【栞】「風が気持ちいいです…」
【祐一】「確かにな…」
運動して火照った体に、冬の冷え切った風が心地よかった。
仰向けに倒れるように空を見上げると、真っ白な雲の隙間から太陽が見え隠れしていた。
今、何時くらいだろうか…。
俺は時計を持ち歩かないし、それは栞も同じだった。
【祐一】「そういや、腹減ったな」
正確な時間は分からないが、1時に待ち合わせだったのだから腹が減って当然だ。
しかし、この辺りに店があるとも思えない。
【栞】「そうですね…。もうすぐ3時ですから」
【祐一】「なんだ、時計持ってたのか?」
【栞】「持ってないですよ」
ほら、とセーターを捲って自分の腕を見せる。
【栞】「私、腕時計って苦手なんです」
【祐一】「俺も腕時計はしないけど、別に苦手じゃないな…」
俺の場合めんどくさいだけだ。
【栞】「時計ならそこにあります」
栞の視線の先…。
公園の中程に、大きな街頭時計が立っていた。
【栞】「2時50分…」
【祐一】「思ったより時間が過ぎてたんだな…。道理で腹が減ってるわけだ」
【栞】「そうですね…。そろそろお昼にしましょうか?」
【祐一】「もしかして、何か食い物持ってきてるのか?」
【栞】「食べ物ですか…?」
【栞】「…お薬ならたくさんありますけど」
言いながら、スカートのポケットから薬瓶を取り出す。
【祐一】「…いっぱいあるな」
【栞】「…えっと、これで全部ですね」
あっという間に、噴水の縁が薬屋の陳列棚になっていた。
【栞】「…食べます?」
【祐一】「やばいだろ…さすがに」
【栞】「そうですよね」
…それ以前に、なんでこれだけの量がポケットの中に入ったんだ?
【祐一】「全部で何十個あるんだ…」
【栞】「お薬以外にも他色々と入ってますけど」
【祐一】「…どうやって?」
【栞】「それは内緒です」
口元にちょこんと指を当てる。