投稿者:おふう 2000/08/27 (日) 23:45:06 ▼ ◇ [mirai]【栞】「今日はいいお天気ですよね」
ガラス越しに降り注ぐ、眩しいくらいの日差し。
【栞】「明日もあさっても、ずっといいお天気だったらいいですね」
【祐一】「ずっとは困る人がいるだろ」
【栞】「だったら、今月中だけでもいいですよ」
【祐一】「そうだな、それくらいだったらいいかもな」
【栞】「はい」
じっと窓の外を見つめたまま、時間と雲が流れていく。
【栞】「祐一さん」
やがて、ぽつりと呟く。
【栞】「分からない答えを探すために来ている」
それは、今までも何度か栞が口にした言葉。
どうして、毎日俺に会いに来るのか、訊ねたときの答えだった。
【祐一】「それで、見つかったのか」
【栞】「まだですね…きっと…」
【祐一】「……」
【栞】「私、お姉ちゃんと違って、頭良くないですから」
【祐一】「ひとつ訊いていいか?」
【栞】「…はい」
【祐一】「…1日しか学校に来なかったって、どういう意味だ?」
【栞】「言葉通り、ですよ」
【祐一】「本当なのか?」
【栞】「はい」
視線は窓の外を見たまま、まるで空のその先にある風景を見ているように思えた。
【栞】「新しい学校で、新しい生活が始まる、その日に……私は倒れたんです」
【栞】「それっきりです」
窓に映る栞の表情は、ただ穏やかだった。
【栞】「本当は、その日もお医者さんに止められていたんです」
【栞】「でも、どうしても叶えたかった夢があったんです」
【栞】「お姉ちゃんと同じ学校に通うこと…」
【栞】「お姉ちゃんと同じ制服を着て、そして一緒に学校に行くこと…」
【栞】「お昼ご飯を一緒に食べて、学校帰りに偶然会って、商店街で遊んで帰る…」
【栞】「生まれつき体が弱くて、ほとんど外に出ることも許されなかった、私のたったひとつの夢」
【祐一】「……」
【栞】「そのことを言ったら、お姉ちゃん笑ってました」
【栞】「安上がりな夢だって…」
【栞】「でも、そんな些細な夢さえ、私は叶えることができなかったんです」
窓に映る少女は、それでも穏やかで、
どこか諦めにも似た、そんな表情だった…。