投稿者:おふう 2000/08/27 (日) 23:49:20 ▼ ◇ [mirai]【栞】「祐一さんっ」
俺の姿を雪の中で見つけて、元気良く手を振る。
【栞】「ちょっとだけ遅刻ですよー」
【祐一】「悪い。ちょっと教室にいたんだ」
【栞】「ところで、今日は体育館で何かあるんですか?」
ここからは見えないのだが、栞が何気なく体育館のある方向を見る。
【祐一】「何でも、放課後に舞踏会があるらしい」
【栞】「あ……昨日準備していた行事って、これのことなんですね」
【祐一】「飾りつけとかしてたか?」
【栞】「凄かったですよー」
【栞】「大きなシャンデリアもありましたし、白い布もたくさん運び込まれてました」
両手を広げて、大きなシャンデリアを表しながらその時の様子を話す。
【祐一】「ふーん、やっぱり本格的だったんだな」
【栞】「舞踏会って、ちょっと憧れますよね」
【祐一】「だったら、今日の舞踏会に出たらいいじゃないか」
【栞】「わ、わ、わたしは全然ダメですよー」
【祐一】「…どうして?」
【栞】「ドレスなんか、絶対に似合わないですし…」
恥ずかしそうに自分のつま先をじっと見る。
【祐一】「確かに、身長と胸が足りないかもしれないな」
【栞】「どうして人が気にしてることはっきり言うんですか!」
【祐一】「気にしてたのか?」
【栞】「ちょ、ちょっとだけですけど…」
下を向いた表情が、真っ赤になっていた。
【栞】「…そんなこと言う人、嫌いです…」
【栞】「って、祐一さん笑わないでくださいっ!」
【祐一】「いや、悪い。栞にも、普通の女の子らしい悩みがあるんだなぁと思って」
【栞】「当たり前ですっ」
【栞】「こう見えても、私だって女の子なんですから…」
ころころと表情が変わって、本気で恥ずかしがっているようだった。
【栞】「それに、私だっていつかおっきくなります…」
【祐一】「おっきくってことは…もしかして、胸の方を気にしてたのか?」
【栞】「祐一さん、嫌いですっ」
【祐一】「それはそうと、昼ご飯食わないのか?」
【栞】「一言で話を逸らさないでくださいー」
【祐一】「アイスクリーム買って来たんだけど」
【栞】「わ。食べますー」
【栞】「そう言えば、今日はスケッチブックを持ってきたんですよ」
【祐一】「スケッチブック…って、昨日言ってたやつか?」
【栞】「はい」
【祐一】「確か、栞が描いた風景画を見せて貰えるんだよな?」
【栞】「恥ずかしいですけど、約束ですから」
そのまま、アイスクリームを口に含む。
【栞】「やっぱり、おいしいです」
栞の笑顔は、アイスクリームを全部食べ終わるまで続いた。
空っぽになったアイスクリームのカップをとりあえず雪の上に置いて立ち上がる。
パタパタとスカートについた雪を払い落とす栞。
【栞】「…本当に見るんですか?」
【祐一】「もちろん」
【栞】「分かりました…」
栞が空色のスケッチブックを取り出して、恥ずかしそうに俺に手渡す。
【祐一】「今、スケッチブックどこから出したんだ…」
【栞】「そんなことより、どうですか?」
【祐一】「ああ…」
栞に促されて、スケッチブックの表紙をめくる。
【祐一】「……」
不思議な絵が描かれていた…。
【栞】「……」
【祐一】「…これは…分かった、異次元だな?」
【栞】「風景画で異次元なんて描かないです…」
【祐一】「……」
とりあえず数枚ページをめくってみる。
【祐一】「……」
【栞】「…どうですか?」
どれも同じに見える…。
いや、それ以前に風景画には見えない…。
【祐一】「…さて、そろそろ教室に戻らないとな」
栞にスケッチブックを持たせる。
【栞】「わー。感想言ってくださいー」
【祐一】「…その前にひとつだけ訊きたいんだけど」