2000/08/31 (木) 00:16:56 ▼ ◇ [mirai]小狼との別れ。桜も満開のあの日から約半年が過ぎた。
それでもさくらと知世、ケルベロスも相変わらずで、3人集まっては騒ぐ日々に変わりはない。今日も今日とて、さく
らの部屋に置かれたビデオの前で、恍惚として映像に見入る知世の姿が。
「やはり、さくらちゃんは超絶可愛らしいですわ~」
「と、知世ちゃ~ん」
「うーむ、やっぱワイはカッコええな~。惚れ惚れするわ~。あー、そこストーップ!」
舞台が切り替わり、画面に小狼が現れる。
たちまち緊張するさくら。頬が紅潮し、食い入るように小狼の姿に惹き込まれる。
(小狼くん……)
そんなさくらを、温かく見守る知世。
さくらは小狼の告白への返事をすることを知世に告げる。
夏休みも、もうじき開けようとか、というこの時期。友枝町では毎年『なでしこ祭』が行われる。今年はさくらたち6
年生のクラスで、劇が行われる事になり、皆、その練習の為、足繁く学校へと通っていた。
さくらのクラスの出し物は、奈緒子が原作を担当した、西洋風の恋物語。さくらが演技するのはそのお姫様役であ
った。難しい役ながらも、一生懸命に演じるさくら。その姿にウットリとする知世。友枝町は早くもお祭り騒ぎを迎えつ
つあった。
学校からの帰り道。さくらは、エリオルの屋敷が取り壊され、その後に遊園地が建てられた事を知る。さっそく知世
と共に行ってみるが、そこにはあの美しい屋敷の面影はなく、大きな遊園地の入り口がそびえていた。少し感傷的
になるさくらだが、次の瞬間、奇妙な気配を感じる。慌てて園内へと走り出したさくらは、そこで小狼に再会する。
「小狼くん!」
「……さくら!」
香港でも夏休みだということで、小狼は苺鈴と共に日本にやって来ていたのだった。久々に会えた苺鈴と仲良くお
喋りをするさくら。小狼と知世は2人を黙って見つめている。苺鈴は素知らぬフリをしながらも、さくらに小狼のことを
切り出す。思わず心臓の鼓動も早くなるさくら。
さくらは苺鈴を夕食に招待するが、苺鈴の気遣いから、さくらは小狼と2人きりで夕食をとることになってしまう。お
互いを意識してまともに話せない2人。さくらが思い切って告白を試みるも、ケルベロスや桃矢の横槍が入り失敗に
終わる。
小狼と翌日に学校で会う事を約束し別れるさくら。胸の内の小狼への想いが膨らむ一方、その、ままならない気
持ちに苦しむさくら。
翌日小狼と苺鈴は久方ぶりの級友達との再会を懐かしむ。しかし近くにいながらも告げられない想いに、2人はギ
クシャクしてしまう。
学校の帰り道、さくら達はバイトの最中の桃矢と雪兎に出会う。
「さくらちゃんの一番見つかった?」
「……はい」
いい加減に2人の関係を見かねた苺鈴のはからいで、いつもの4人組は例の遊園地に遊びに行く事に。そこで苺
鈴は奥の手として、観覧車に2人を無理矢理詰め込む。2人きりになったことで、ようやく告白できそうなムードであ
ったが、突然現れた奇妙な気配に、クロウカードを奪われてしまう。地上に着くや2人が追い駆けた先にあったの
は、どうという変哲のないミラーハウスであった。その中に現れた奇妙な少女。さくらは魔法を使うが、その度にカー
ドが奪われてしまう。
家に帰りついたさくらはそのことをケルベロスに告げるが、謎は深まるばかりだ。その時、突然、イギリスのエリオ
ルから連絡が入った。彼の説明によると、その少女は最後のクロウカードであり、今までは屋敷の地下に封印され
ていた物が、建物の崩壊と共に解き放たれたのだと言う。その力は従来の正の属性を備えたクロウカードとは対を
為す、負の属性を持った唯一のカードであると言う。カードの暴走を抑えるために作られたカードであったが、それ1
枚で他のカード全てと同等の力を持ってしまったカードは、その力を危険とみなされクロウ・リードにより封じられた
のである。そのカードを止めるには、他のカードと同じようにさくらカードに変える必要があるのだが、それには魔力を
持つものの一番大切な想いを引き換えとしなければならない。愕然とするさくらだが、カードの妨害により通話が途
切れてしまい、それ以上の情報を得る事はできなかった。
翌日、小狼にカードのことを説明するさくら。自分達の気持ちと引き換えにカードを封印することに抵抗を露わにす
るさくらだが、小狼はカードキャプターとしての使命に捕われ、さくらの気持ちに反した答えを返してしまう。さくらは
涙を零しながら、小狼の元から走り去って行くのだった。
なでしこ祭に向けてクラスでは着々と演劇の準備が進んで行く。小狼との間の気まずい雰囲気も消えやらぬま
ま、黙々と練習を重ねるさくら。しかし負のカードがさくらカードに惹かれるかのごとく学校を急襲する。さくらはとっさ
にスリープのカードを使って校内の全ての人々を眠らせるが、この事件により、なでしこ祭で王子役を演じる予定で
あった山崎が怪我を負ってしまう。そこで急遽、小狼が代役として充てられる。
なでしこ祭当日、大勢の観客を前に、ステージ上では知世が美声を披露していた。さくら達も準備を終え、後はス
テージに上がるのを待つばかりである。舞台の幕が上がった。
今日は仮面舞踏会の日。いつもは戦にまみれた日々も、今日ばかりは別の事。あらゆる人々が仮面を付け、見
知らぬ男女と手を取り合う。その中で一人のお姫様が侍女を伴い、会場へと足を踏み入れた。なにぶん始めての経
験との事で、落ち着かなげなお姫様。束の間の平和に息を漏らすが、そんな彼女の声に応える男性が。彼もまた争
いを厭い、憎しみに満ちた人の心を憂えていた。彼らが互いに惹かれ合うのに時は急がなかった。しかし、お姫様
は知ってしまう。彼の正体は、長年自国と争いあってきた隣国の王子であるということを。敵対する国同士の王子と
王女の間に実を結んだ秘められた果実。お姫様はそのあまりのせつなさに身を苛まれる。
「あなたに伝えたいのです。私の……本当の想いを!」
舞台は最高潮に達しようとしていたが、急襲を掛けて来た負のカードが、次々と観客を消して行く。暴走を始めたカ
ードは友枝町全体をも食らい尽くそうとしていた。カードを負って行こうとするさくらと小狼を呼び止める知世。
「さくらちゃんはいつでも私の作った衣装を着て帰って来てくださいましたわ。ですから、今度もこれを着て行ってくだ
さいな」
知世の作った服に着替えたさくらと小狼はカードの気配を探り始めた。知世と苺鈴が犠牲になったが、カードの在
処を突き止めることに成功した。カードは旧柊沢邸、現在の友枝遊園地にいた。さくら、小狼、ケルベロス、ユエは真
っ向から勝負を挑んだものの、その巨大な力の前では、クロウにより力を与えられたケルベロスやユエは歯が立た
ず、敢え無く消されてしまう。
もはやカードも残り少なく、手を限られたさくらを見て取った小狼は、クロウに属さない自分ならば抗することができ
る、と一騎打ちをかける。一旦は押していた小狼であったが、カードの全力を押さえる事はできなかった。さくらが駆
けつけた時、そこに残っていたのは、一部が大きく消失し崩折れた観覧車であった。感情を爆発させたさくらはカー
ドに挑むが、全てのカードが奪われてしまう。
あわや、さくらも消されようかという時、奪われたはずのさくらカードが再びさくらの前に現れる。カード達の突然の
行動にうろたえる負のカード。
「どうしてみんな友達になってくれないの!?」
「無理矢理に友達になっても、それは本当の友達じゃないよ!」
さくらの諌める言葉に動揺するカード。カードはさくらの言葉に従うままに封印を受け入れる。それと引き換えに、カ
ードの力がさくらの想いを消し去ろうとしたその時、カードの攻撃から逃れる事ができた小狼が現れ、魔力をほとん
ど消失していたさくらの身代わりとなる。
「例え一度は忘れても、またさくらの事を好きになるから……」
小狼はそう言い残し、そしてカードは完全に封印される。夜明けも近い廃墟の中で後に残ったのはさくらと小狼の
みだった。壊れた壁からは朝日が射し込み始めていた。無表情のままさくらを見詰める小狼。不安の色を隠す事は
できないが、それでもさくらは勇気を振り絞り告白する。
「私、私、小狼君のことが……大好き」
小狼は感情のこもらない瞳でさくらを見上げた後、ふと口元をほころばせ呟く。
「ああ。……俺もだ」
さくらの手の中で輝くのは、新たなさくらカード、希望のカードだった。破壊の跡は朝日に浄化されるかのように消
し去られ、消えていた人々は次々と目を覚ます。
「わ!よせ!もう少しすれば元に戻るんだから……!!」
「やあだぁ!」
慌てる小狼の制止の声に耳を貸さずに助走をつけると、さくらは小狼との間にある崩れた階段を一気に飛び越え
た。その姿は日の光を浴びた天使のように眩しく見える。
「だーい好き!」