2000/09/01 (金) 22:03:06      [mirai]
 思いもよらぬ知らせが届いたのは高校3年の春、バドミントン県大会の試合が終わった直後だった。

 母、死去…。

 祥子には何も知らされていなかった。母親が病院に通っていることすら知らなかった。父親と姉が、いらぬ心配をかけぬようにと教えなかったのだ。

 「サウスポーの菅原」。県内で名前が通るほどの腕前だった。高校時代はバドミントンに打ち込んでいた。それを言い訳にしたくないが、母親の変化には気づかなかった。

 「突然の出来事で…。夢だと思って目がさめると、やはり家に一人足りない…。精神的にたいへんな時期でした」

 ちょうど母の日に行われた葬儀で、県大会でとった賞状を一緒に棺におさめた。

 生活が大きく変わった。彼女が一家の中心となった。3つ年下の妹の弁当を毎朝、早起きして作った。

 「妹はまだ中学生。ほかの子たちと比べ、劣っているとか惨めな思いはさせたくありませんでしたから」

 進路変更をした。短大へ進み、それから実業団に入ってバドミントンを続けようと考えていたが、一転就職へ。

 「バドミントンを続けていても、どれだけ食べていけるか。好きなことはお金を貯めてからやればいい」