投稿者: 2000/09/06 (水) 04:08:17 ▼ ◇ [mirai]かつあげ未遂事件
その日、私は学校帰りに1人でオックスフォードストリートを歩いていた。
ちょっと脇道に入ったところで、身長170センチはあろうかという黒人のおねえちゃんに「あ
んたいくつ?」といきなり声をかけられた。
そりゃ私はチビだ。ましてや西洋の国にいれば、オチビの印象もさぞかし強かろう。しかし、
見ず知らずの人間に、やぶからぼうに年を訪ねられる筋合いは無い。日ごろ教養のカケラ
もないイギリス人達から、容赦のない口喧嘩の手ほどきを受けて暮していた私は、カチンと
きた勢いでおもわず「ナンジャファッキンビジネス!ピスオフ!(かんけーねーだろ!うせ
な!)」と一喝してしまった。
彼女の顔は見るまにひきつった。そして、ドスのきいたハスキーボイスで「あんたのカバンを
こっちによこしな。さもないと痛い目にあうよ」と私を脅した。私のカバンはテロテロの合皮
だ。私自身、どう見ても金を持ってるような風貌ではない。現に、当時の所持金はたったの
2ポンド(400円くらい)だった。彼女は完全に人選ミスをしてしまったのだが、私も後へはひ
けない。ジャングルで猛獣に出くわしても、決して目をそらしたり背中を見せてはいけないと
いうではないか。そこで私はもう一発かます事にした。「ゴーオンゼン!(やれるもんならや
ってみな!)」と叫んだ直後、私は髪をつかまれてグルグルにひきずりまわされていた。
「キャアアアアアア!」 と喉がつぶれるほど叫んでみたが、誰も助けに来てくれない。みん
な遠巻きで傍観している。「これがジェントルマンの国ってかああ?」とちょっぴり絶望した
が、こうなったら「自分の身は自分で守れ」だ。
両腕はしっかりカバンを握っている。でも、両足は自由だと気づいたので、ゴロンと寝っころ
がってみた。寝っころがったほうが体重をかけられるので、これ以上ひきずりまわされること
はなくなった。カツアゲ女は、今度は必死にカバンを引ったくろうとする。少しずつ少しずつカ
バンの紐をたぐり寄せて、彼女が射程圏内へ入ってきたところで、両足を使って奴の腹を死
ぬほど蹴ってやった。「グゴッ!」と鈍い声をあげて、ちょっと弱ったように見えた。その後、
なんだかんだともみあっているうちに、観念したのかプイっと背中を向けて去って行った。そ
の後ろ姿に向かって「ユーファッキンビッチ!(このクソアマ!)」と叫んだら、いきなりクルっ
と振り向きやがったので、私はマンガみたいにピューっと全力疾走で逃げた。
結局は1銭も奪われなかったけれど、首の筋肉痛でその後2日間寝たきりになってしまっ
た。ロンドンだったから(もしくはそのネエちゃんがただの子どもだったから)無事だったので
あって、この話をアメリカ人の友達にしたら「ユークレイジー!」とあきれていたので、外国で
変な人にからまれたら、逃げるか、とりあえず命とひきかえに手持ちの現金をおとなしく渡す
方が賢明なようだ。
もしくは、あくまでも先手必勝。「ヘイ!」と声をかけられたら即ぶちのめすしかないだろう。
たとえ相手が時間をたずねたかっただけだったとしても…
みんな、気を付けようね!口ポカンとあけてタラタラ歩ってちゃダメよん。
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