とても幸せだった…。 それが日常であることをぼくは、ときどき忘れて しまうほどだった。 そして、ふと感謝する。 ありがとう、と。 こんな幸せな日常に。 水たまりを駆けぬけ、その跳ねた泥がズボンのす そに付くことだって、それは幸せの小さなかけら だった。 永遠に続くと思ってた。 ずっとぼくは水たまりで跳ね回っていられると思 ってた。 幸せのかけらを集めていられるのだと思ってた。 でも、壊れるのは一瞬だった。 永遠なんてなかったんだ。 知らなかった。 そんな、悲しいことをぼくは知らなかった。 知らなかったんだ…。 「えいえんはあるよ」 彼女は言った。 「ここにあるよ」 確かに、彼女はそう言った。 永遠のある場所。 …そこにいま、ぼくは立っていた。