どこまでもつづく海を見たことがある。 どうしてあれは、あんなにも心に触れてくるのだ ろう。 そのまっただ中に放り出された自分を想像してみ る。 手をのばそうとも掴めるものはない。 あがこうとも、触れるものもない。 四肢をのばしても、何にも届かない。 水平線しかない、世界。 そう、そこは確かにもうひとつの世界だった。 そして、その場所には向かえる場所もなく、訪れ る時間もない。 でも、それは絶望ではなかった。 あれこそが永遠を知った、最初の瞬間だった。 大海原に投げ出されたとき、ぼくは永遠を感じる。 だからぼくは、小さな浜辺から見える、遠く水平 線に思いを馳せたものだった。 虚無…。 意志を閉ざして、永遠に大海原に浮かぶぼくは、 虚無のそんざいだった。 あって、ない。 でもそこへ、いつしかぼくは旅立っていたのだ。