投稿者: 2000/09/27 (水) 12:12:01 ▼ ◇ [mirai] 帰り道…
(ん…?)
帰り道を見ている気がするよ。
(そう…?)
うん、遠くに出かけたんだ、その日は。
(うん)
日が暮れて、空を見上げると、それは違う空なん
だ。いつもとは。
違う方向に進む人生に続いているんだ、その空は。
その日、遠出してしまったために、帰りたい場所
には帰れなくなってしまう。
ぼくは海を越えて、しらない街で暮らすことにな
るんだ。
そしていつしか大きくなって、思う。
幼い日々を送った、自分の生まれた街があったこ
とを。
それはとても悲しいことなんだ。
ほんとうの温もりはそこにあるはずだったんだか
らね。
(………)
(…それは、今のあなたのことなのかな)
そんなふうに聞こえた…?
(うん…)
ぼくはね、最後まで頑張ったんだ。
(………)
あのとき、頑張って、自分の街に居続けることを
願った。
それは別にこの世界を否定しようとしたんじゃな
い。
この世界の存在を受け止めたうえで、あの場所に
居残れるんじゃないかと、思っていたんだ。
でもダメだった。
(そんなことわざわざ言って欲しくないよ…)
ただね、もっとあのとき頑張っていれば、ほんと
うに自分をあの場所に繋ぎ止められたのか、それ
が知りたかったんだ。
(どうして?)
べつに、可能性があったとして、それはここに来
ないで済んでいたのか、という話しじゃない。
ただ、もしほんとうにできるんだったら、ぼくの
人との絆っていうものがそれだけのものだったの
かと、悔しいだけなんだ。
どう思う?
(たぶん…無理だったと思うよ)
(この世界はあなたの中で始まっていたんだから)
やっぱりそうか…。
(うん…)
でも、それが無理でも、この世界を終わらせるこ
とはできたかもしれない。
(………)
いや、できる、かもしれない。
(この世界は終わらないよ)
(だって、すでに終わっているんだから)