投稿者:   2000/10/23 (月) 01:28:13      [mirai]
 水門を越え、川の上流までやってきた。
 道らしい道もなくなり、ふたりは河原の石の上を飛び移って進んだ。
「コケんなよ、血が出るぞ」
「おう」
 ときどき危なっかしい耕一を振り返りながら、梓が言った。
 梓の身軽さに、耕一は一生懸命ついていった。
 運動神経は耕一だってさほど悪くない。
 要は慣れと度胸だ……度胸だ。
「水門より上は危ないからって、楓と初音は連れてこないんだ」
「ふーん」
 楓と初音は例の女の子たちの名前だ。
 ふたりともまだ小学校の低学年だ、たしかにここは危なすぎる。
「ところで、コーイチ。お前、何年?」
「五年。お前は?」
「三年」
「なんだ、二年も下じゃないか」
 聞いた途端、耕一の声がおっきくなった。
 いままで対等だった関係が、わずかに優位になった気がした。
「気をつけろ、梓。ケガすんなよ」
「はあ? しねーよ」
 とたんに兄貴風を吹かし始める耕一だった。