水門を越え、川の上流までやってきた。 道らしい道もなくなり、ふたりは河原の石の上を飛び移って進んだ。 「コケんなよ、血が出るぞ」 「おう」 ときどき危なっかしい耕一を振り返りながら、梓が言った。 梓の身軽さに、耕一は一生懸命ついていった。 運動神経は耕一だってさほど悪くない。 要は慣れと度胸だ……度胸だ。 「水門より上は危ないからって、楓と初音は連れてこないんだ」 「ふーん」 楓と初音は例の女の子たちの名前だ。 ふたりともまだ小学校の低学年だ、たしかにここは危なすぎる。 「ところで、コーイチ。お前、何年?」 「五年。お前は?」 「三年」 「なんだ、二年も下じゃないか」 聞いた途端、耕一の声がおっきくなった。 いままで対等だった関係が、わずかに優位になった気がした。 「気をつけろ、梓。ケガすんなよ」 「はあ? しねーよ」 とたんに兄貴風を吹かし始める耕一だった。