梓の言う穴場とやらで、ふたりは釣りの準備をした。 「エサはどうすんだ」 「その辺の石とかどかせばいるだろ」 「石?」 「ほら、それとか」 そう言って、梓は大きめの石をひっくり返した。 その裏にいたミミズを捕まえ、 「ほら」 耕一に差し出した。 うねうね動くミミズ。 正直、気持ち悪いと思いつつも、それを受け取ると、梓をまねて針に通した。 針が刺さってもミミズは平気で動いていた。 「いいか。ヤマメはすぐ逃げるから、音立てんなよ」 「わかった」 水面にふたつの銀糸が垂れた。