じーじーじーじー……。 アブラゼミがうるさく鳴いている。 都会ではうっとうしいその声も、いまはなんの抵抗もなく受け入れられた。 強い陽射し。 それを全身に浴びていた。 都会ならいやな汗が背中を伝っているはずだ。 だがふたりとも汗をかいてはいない。 木の葉を揺らして通り過ぎる風がさわやかだからだ。 どこからともなく緑の葉っぱが落ちてきて、輝く水面に落ち、流れていった。 ふたりは静かに銀糸を見守っている。 都会の生活とはまったく違う時間の中に、耕一はいた。 力強く、穏やかな、生命の息吹を感じていた。