投稿者:   2000/10/23 (月) 01:28:47      [mirai]
 じーじーじーじー……。
 アブラゼミがうるさく鳴いている。
 都会ではうっとうしいその声も、いまはなんの抵抗もなく受け入れられた。
 強い陽射し。
 それを全身に浴びていた。
 都会ならいやな汗が背中を伝っているはずだ。
 だがふたりとも汗をかいてはいない。
 木の葉を揺らして通り過ぎる風がさわやかだからだ。
 どこからともなく緑の葉っぱが落ちてきて、輝く水面に落ち、流れていった。
 ふたりは静かに銀糸を見守っている。
 都会の生活とはまったく違う時間の中に、耕一はいた。
 力強く、穏やかな、生命の息吹を感じていた。